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「……先生、中、案内してよ」
先に落ち着きを取り戻した室見に囁かれ、郁は操られるように職員玄関のセキュリティを解除した。
昨日から始まった一週間の学校閉校期間は、文字通り学校を閉めきってしまうため、生徒も教師も誰も来ない。教員の長時間労働を是正するのが狙いで、期間中は補習も部活も行わない。いつもは部活で騒がしい体育館やグラウンドまで閑散としていた。
ただし、完全閉校といっても理科教師の郁は、学校で飼育している魚や両生類へのエサやりのために一日一回は学校へ来ていた。郁が学校閉校中のだいたい十一時にエサやりに現れるという情報を、室見は一体どこから仕入れたのだろうか。彼の家は大きな製薬会社の創立者一族なので、もしかしたら、事故とはいえ過去に番にしたオメガである郁の素性や動向などは業者に調べ尽くさせているのかもしれないとも思った。
校舎に入ると、郁は明科と書かれた下足入れから上履きを出し、室見には来賓用のスリッパを一組出した。
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