教科書通りの恋を教えて

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「今日のスープおいしいよ。ミネストローネだけど、先生食べられる?」 「ああ、食べられるよ」 「一応、少なめにしといたよ。このくらいなら食べられる?」 「……ありがとう」  椀を見ると、半分より少し下くらいまで赤いスープが入っていた。  トマトが苦手なことは、前に質問された時に確かに答えた記憶があった。酸味が苦手で、どうしても食べなければならない時は、味のことを考えずに一気に流し込む、なんてことも話した。好き嫌いはなるべくしないように、と指導している手前、苦手な食べ物があることは秘密にしておいたほうが良かったかもしれないな、と郁はスープを流し込みながら思った。  自分がよそったスープを郁がちゃんと飲み干せたのを見て、室見は笑みを浮かべた。 「室見は苦手な食べ物ないのか?」 「あんまりないかな。でも、ゴーヤとかパクチーは苦手かも」 「ああ、癖がある食べ物はしょうがないよな」 「はい! 私パクチー好きー」 「マジで? あれカメムシのにおいじゃん」 「おまえらには聞いてねーよ」 「ハイハイ、室見はすぐ嫉妬すんだから。みんなの先生なんだから、ちょっとくらい遠慮してよね」  そばに居た生徒たちが話に加わり、賑やかな食卓になる。室見がクラスメイトとちゃんと馴染めている様子に、郁は少しほっとした。
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