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「人間には、男女の型とアルファ、ベータ、オメガの性別種の違いがあります。現代ではどの型や性別種でも妊娠可能ですが、大昔は女型しか妊娠することができませんでした。そのため、結婚は男女の型間のみで制限されていた時代もありました。次に性別種の違いについてですが、アルファとオメガにはヒートと呼ばれる発情期があります。オメガは早ければ十二歳頃から、月に一度一週間程度ヒートになり、性フェロモンを放出します。この性フェロモンはオメガの意思にかかわらず周囲のアルファやベータを惹き付けてしまうことから、基本的にはオメガ種の人は常に薬を飲んで抑えています。また、アルファのヒートはオメガのヒートを引き金としてのみ起こります。ベータにはヒートはありませんが、オメガのヒートに惹き付けられて欲情することがあります。オメガはヒート期間中に性行為をすると高確率で妊娠しますが、期間中以外では妊娠の確率は極めて低くなります」
郁が受け持つクラスには、オメガが二人いた。
オメガはアルファやベータを誘引するヒートを発症することから、動物的だとして他の性別種から蔑まれる対象とされてきた歴史がある。現代においては表だってオメガを差別することは無くなってきているが、意識的にしろ、無意識にしろオメガを差別的に見る風潮は存在する。郁が小学生だった頃は、高学年で性別種がわかるとオメガだけを別クラスに隔離する公立学校すらあり、そこでは教師ですらオメガを差別することに何の問題意識も持たなかったという。けれど、郁はこれからの子供たちには、性別種で差別するような意識を持って欲しくないと思っていた。
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