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とあるお宅のリビングでの話だ。
動物も植物も何もかも眠ってしまった真夜中、深夜二時を時計の針が指し示す。
シンと静まり返った夜の世界、ちょいと洒落た外装の小窓から銀色に輝くお月様の柔らかな光がリビングに差し込んだ。
唄が聞こえる。
柔らかく、情愛にあふれるような心地よいテノールボイス。
凛と澄んだ透き通るようなソプラノボイスが月の光に誘われたかのように合唱を始めた。
太陽が沈み闇が降りたつ
人も草木も眠る時
銀色の月が目を覚ます
さあ、今宵も唄いましょ
真夜中は我らの時間
さあ、今宵も語ろうか
銀色の月に照らされて
我々は目を覚ます
「ふむ、素晴らしい。相変わらず月は美しいものだ。そうは思わないかね女王よ」
いつの間にか、黒を基調とした古風なシルクハットをかぶった長身の男がリビングの椅子に座っていた。
男は明らかにこの家の住人では無いのだが特に気にする様子もなく優雅に紅茶を啜っている。
「そうね、確かに綺麗な月・・・・・・それで何の用かしら帽子屋?」
女王と呼ばれた女性は不機嫌そうに帽子屋の元へ歩み寄った。
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