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「つれないな。久しぶりに目覚めたんだ、せっかくだから君と二人でお茶でも飲みたくてね」
帽子屋は洒落たティーカップに紅茶を注ぐと女王に差し出した。
「まったく・・・お茶をしたいなら三月兎でも呼べばいいじゃない。アイツならよろこんで来るでしょうに」
女王はあきれ顔でカップを受け取り空いている席に腰掛ける。
「三月兎・・・か。うん、悪くない。だけどね今回は彼、目覚めてないみたいだよ?」
帽子屋の言葉に女王は驚いたように「へえ」と呟いた。
「・・・・・・死んだの?」
「はは、縁起でもないことを言うものじゃないよ女王。彼は元気さ、ただ今回は目覚めなかった・・・・・・それだけのことだよ」
無言の空気が流れる。
二人は何をするでもなくただ紅茶を飲みながら窓の外を眺めた。
かすかに濡れた桜色は女王の唇。何気なく開かれたそれは透き通るようなソプラノボイスで唄を口ずさむ。
世界の始まりはゼロ
私たちは世界を見定める
かつて人間だった私たちは
自分自身に呪いをかけた
そして時は凍結する
凍った時のなかで
私たちは眠る
銀色の光が
再び時を溶かすまで・・・
、
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