真夜中の病棟で

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消灯は十時。 九時には睡眠薬を飲んで病室のベッドに横になる。 だから、僕は、真夜中の十二時には、ほとんど薬の働きで眠っている。 その睡眠薬も何時間か経つと効果が薄れてきて、十二時を少し過ぎたころ、目が覚めてしまう。そうしたら、ナースステーションに行って、追加の睡眠薬をもらって、その場で飲むことになっている。 そう。その場で。看護師さんが見ている前で。看護師さんは、その時刻を記録する。それが、たいてい、一時か二時。 十二時には、準夜勤の看護師さんから引き継いだ深夜勤務の看護師さんが病棟内の病室を巡回する時刻だから、僕が追加の睡眠薬をもらうのは、深夜勤務の看護師さんだ。この時間、看護師さんはナースステーションの近くの当直室にいることが多いが、足音を聞きつけて、すぐに出てきてくれる。 それが、深夜過ぎの病棟の日常だ。 いつもなら、深夜過ぎまでは睡眠薬で眠れる。 が、その日は、違った。 目が覚めると、ちょうど真夜中の十二時。 なぜか、うまく眠れなかったようだ。 それでも、また、目を閉じて、しばらくベッドに横になっている。 深夜勤務にはいった看護師さんが病室にやってくる。懐中電灯を手に、患者の様子を確認して行く。 しばらくしたら、また、いつものように、ナースステーションに追加の睡眠薬をもらいに行けばいい。 ところが、もう一度、誰かが、廊下を歩いて病室の入り口で止まった。 看護師さん? だが、何か変だ。 病室にはいってくる気配がない。 どうしたんだろう? 僕は、そっと、ベッドから起き上がり、ベッドを囲むカーテンを開けて、病室の入り口に視線を向けた。
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