<第一話>

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「なんっで!まだ!来ねぇぇんだあああ!?俺様をナメてんのかっ!?あぁ!?」  カツアキは一昔前の不良よろしく、不良のてっぺんを取りたがった。少し前までは荒れていたという御花中。そのボスに君臨し、女も教師も言いなりにしてやろうという--なんともまあ、単純かつ脳筋な発想である。  実際御花中と御花町近辺にはいくつか不良グループが存在し、勢力争いを繰り広げているらしかった。御花中を支配しているのは主に“蒼蓮華(アオレンゲ)”というチームだ。カツアキが“てっぺん”とやらを穫る為にはまず、この蒼蓮華を跪かせることが不可欠だったわけである。  カツアキは自分の取り巻きを集めて“鬼組”という自分のチームを結成し(幸児は勝手にその下っ端構成員にされていた)蒼蓮華に勝負を挑んだ。タイマンという奴である。御花町の夜はストリートファイトが盛んだ。蒼蓮華の現在トップもそのストリートファイト上がりと聞いている。真正面から勝負を挑めば逃げる筈がないというカツアキの算段だった。  ただし、卑怯と不誠実を体現したようなカツアキである。もし負けそうになれば、取り巻き達に命じて相手を袋叩きにするくらいやりかねない、と幸児は思っていた。ついでに自分もその“祭り”には強制参加になるのだろう。生真面目という訳ではないが、一般人的な常識思考を持つ幸児としては、気乗りしないことこの上なかった。 「約束に一時間も遅刻するたぁ!どういう了見だ、あぁ!?」  そのカツアキは現在幸児の目の前で怒り狂っている。約束(一方的な)をしたにもかかわらず相手がまだ姿を現さない為だ。蒼蓮華のボスがどんな人物なのかは自分達もよく知らない。来れば普通は名乗りを上げるだろうし、という実にいい加減な計画だった。カツアキに精密さや計画性なんて求めてはいけない。幸児もよく思い知っている。  ちなみにそのカツアキも四十分遅刻した上でこの場にいるわけだが、それをつっこんだら最後自分の鼻はへし折られるだろう。--いやそれだけでは済まないかもしれない。
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