<第一話>

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「いやーごめんごめん!場所がわからなかったもんでさー!」  そいつは場違いに明るい声で、颯爽と現れた。それこそ幸児がたった今想像していたヒーローのように。 「…え?」 「……へ?」 「あ?」  ポカンとしたのは幸児だけではない。さっきまで廃材に当たり散らしていたカツアキや不良達でさえ、一瞬怒りを忘れてその人物を見ていた。 「ん?なんだいなんだいその顔は。あたしの顔に何かついてる?」  そいつは--どっからどう見ても、女の子だった。  御花中指定の紺色のセーラー服。臙脂のミニスカートからは、健康的ですらりとした足が覗いている。服の上からも分かる胸元は豊満で、しかし細いなりに鍛えられた体をしているのが見てとれた。  トドメが金髪に碧眼。明らかに欧米系の顔立ちをした娘は、ちょっと見ないくらい可愛かった。こんな場所にいるには明らかに不似合いだ。  そして。 「廃材置き場を灰ざいおき馬なんてさ!君はよっぽど馬鹿なんだね!」  笑顔であっさり地雷を踏み抜いていった。それはもう盛大に。  暫く固まっていたカツアキも、やがては顔を真っ赤にして--再び廃材を蹴り飛ばした。 「このクソアマ…女だからって調子こいてんじゃねぇぞ…!俺様が誰だか分かってんのか!?」  いやまだ新興チームだし全然有名じゃないと思うけど。派手な崩壊音に身をすくませつつ、内心でツッコミを入れる幸児。 「大体てめぇは何なんだ!?こんな時間にこんな場所に来て、ブチ犯されてぇか!?」 「うわあ、下品だぞ君。見た目通りだね」 「--ッ!」  今度こそ怒りで言葉が出なくなったらしいカツアキ。真っ赤な顔でパクパクと口を動かす様はまるで金魚か何かのようだ。
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