14人が本棚に入れています
本棚に追加
--彼女…度胸あるなあ。それとも壊滅的に空気読めないだけ?
普通ならか弱い乙女のピンチと焦るところ、あまりに突然の展開すぎて幸児の思考は麻痺していた。そもそも残念ながらと言うべきか、見ず知らずで命知らずの女の子の為に命を捨てられるほど、幸児は正義感の強い性格ではない。
「もしかして君があの手紙の“カツアキ”って人?誤字脱字ひっどいよー。あ、あたしは蘭堂アリシア。一応今、蒼蓮華のリーダーってことになってるからさ。ちゃんと一人で来たんだぞ?君と違ってね」
アリシアと名乗った少女の言葉に、今度こそ幸児は耳を疑った。今なんと言ったか?蒼蓮華のリーダー?彼女が?
「女がリーダーだぁ?はっ…思ってたより甘ったれたチームなんだな、蒼蓮華は!こりゃあタイマン張る必要もなかったかなぁ!?」
「こりゃあ御花中はカツアキさんの天下になったも同然っすね!」
「さっさと潰しちまいましょう!」
ふん、と鼻を鳴らすカツアキに、やんややんやと騒ぎ立てる取り巻き達。幸児は思った。
--なんで悪役ってこう…自ら死亡フラグ立てるんだろ…。
どう見ても三流チンピラの台詞である。これで勝てたら自分、カツアキを尊敬してしまうかもしれない--なんてアニメの見過ぎだろうか。
「やれるもんならやってみなよ。女だからって手加減はいらないからね。君みたいなお馬鹿に潰されるほど、蒼蓮華は脆くないんだぞ」
一つ明記し忘れたこと。カツアキはフェニミストではない。女漁りはするが、女相手でも子供相手でも平気で暴力を振るう男だ。前にカツアキがナンパに成功したビッチくさい女子高生は、かなり乱暴な扱いをされたようであざだらけの半裸で帰っていった。幸児を震え上がらせた出来事の一つだ。
カツアキがそういう意味で“男女差別をしない”男であったこと。それは果たして彼にとって幸いだったのか不幸だったのか。
最初のコメントを投稿しよう!