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「遊んであげるよ。かかっておいでヒヨコちゃん」
「上等だコラァアアアアアア!」
アリシアよりも一回り以上大きな肉体が、拳が。容赦なく少女に襲いかかる--その筈だった。
よくよく考えれば油断などしてはいけなかったのだ。
なんで女の子がそれなりに大きな不良チームのリーダーなんかやっているのか。それが嘘なら何故そんな嘘をついたのか。カツアキがもう少し頭が回る男なら、彼女や彼女の周囲をきっちり警戒していた筈である。
とはいえ幸児もまた、その事実に行き当たったのは、カツアキの体が無様に宙を舞ったその後だった。
「パワーもスピードも全然ダメ。もう少しくらい楽しませてくれると思ったんだけどなー…」
なにが起きたのか、幸児にはまるでわからなかった。ただ大男の体が廃材の山に頭から突っ込み、びくびくと痙攣して動かなくなる様を呆然と眺めていた。
彼女のポーズから察するに。多分右ストレートで真正面から一発、殴ったのだろう。何故多分なのかといえば、そのモーションが幸児の目にはまるで追えなかったせいだ。
気がつけばカツアキは吹っ飛んでいたし、気絶していた。ああ、あれはショックロール自動失敗か。頭がついていかない幸児は現実逃避気味に思った。某卓ゲまたやりたいな、ネットでスレ立てしたらまた誰か参加してくんないかな、なんて考えてみる。
いくら考えても目の前にある景色が変わる筈もなかったが。
「…決着、ついたよね?なんだい君達、ボスがやられたのにまだ文句でもあるかい?」
不良達をねめまわし、アリシアはにっこりと笑った。その笑顔が--そう、まるで向日葵が咲いたようなものだったから。幸児はカツアキとは別の意味で、運命を狂わされる羽目になったのである。
答えは単純明快だ。
その瞬間柳生幸児は、蘭堂アリシアに恋をしてしまったのである。
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