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「おい、瀬戸!オマエは誰が好みやねん?」
高木先輩が酒臭い息を吹きかけながら、ボクに絡んでくる。
ここは新橋の安居酒屋。
終電までの社内飲みでのことだ。
はじめ会社のグチから始まった飲み会が、やがて「社内の好みの女子」の話題に突入し、既に1時間以上が経過していた。
「いや、ボクは・・、社内は無いですよ」
入社2年目のボク、瀬戸タカシは、そう言ってハイボールをすする。
「瀬戸くん、そんなつまらない答えはいただけないな」
もう一人の先輩、荒波さんが冷たく言い放つ。
「瀬戸くんは営業なんだから、こういった時は話題を提供するようにしないと。クライアントとの飲み会でも出るでしょ?オンナの話」
荒波先輩は理系出身のエンジニアだ。同期ながらも、営業畑の高木先輩とは違った知的な雰囲気を持ち合わせている。
だが、社内では愛妻家で真面目なイメージで知られる荒波先輩が、初めての飲みの席で高木先輩と一緒に社内女子の話題で盛り上がるのには驚いた。
やはり、人は見た目じゃ分からない。
しかも、荒波先輩はやたらに女性の胸にこだわりがあるようだった。
この小1時間ほどで、ボクは社内女子のカップサイズに詳しくなっていた。
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