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「じゃあ、瀬戸くんのお気に入りは楠木ってこと?」
荒波先輩が会話に加わる。
「いえ、お気に入りというか、気になるんですよ。誰のためのタスポなのかが・・・」
ボクは首をかしげながら言った。
「それはタバコを吸う社員への気遣いやろうが。
あの子はめっちゃ気が利く子やから、ワシは何も不思議に思わんけどな。
大体、オマエはちいちゃいことにこだわり過ぎやわ」
高木先輩が呆れ顔で言う。
その顔は酒のせいで既に真っ赤になっている。
「じゃあ、なんで“彼氏がいる”って言わないんだろう。もしかしたら、何か隠してるんじゃないかって思うんですよ。みんなに言えない秘密があるんじゃないかと・・・」
ボクは問題の核心に触れた。
「言えない秘密・・・、なに!不倫か!?」
高木先輩が驚いた声で叫ぶ。
「もちろん、ただの憶測ですよ。でも、タスポがカギだと思うんです。社内のどこかに彼女があのタスポでタバコを買ってあげてる本命のオトコがいる筈です」
ボクは、まるでホームズかのように推理してみせた。
「おー!そう言われるとなんだか悔しくなってきたわー!オレのすみれが、あのタスポで不倫男にタバコをせっせと買ってあげてると思うと!そいで誰や、そいつは?」
「いや、だから、それが分からないんですって」
「うー、一体、誰やねん?その羨まし過ぎるオトコは!」
拳を握りしめ、高木先輩が悔しがる。
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