たすぽ

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「そう言えば、楠木が浜永部長と付き合ってるっていうウワサは聞いたことがあるな」 荒波先輩が再び、会話に加わってくる。 浜永さんは販促部の部長で、やり手のビジネスマンだ。だが、ラグビー部出身の巨体にはどこかムサ苦しさがあって、社内では“ハマウータン”のあだ名が付けられていた。 ちなみに美人な奥方と二人のお子さんがいる。 「たしか、二人が一緒にタクシーに乗り込むのを見たっていう女子も居たな」 いつしか、荒波先輩の目が鋭くなっていた。 「まじか!?すみれちゃん、ハマウータンと不倫か?それは、アカンわ!あの子には幸せになってもらわんと!」 興奮した高木先輩がボクを指さした。 「瀬戸!オマエ、すみれちゃんと一緒になれ!ハマウータンからすみれちゃんを救うんや!オレが二人の間を取り持つから!あの子はオマエより年上やし、絶対ええ嫁さんになるぞ!」 ボクは驚きのあまりに絶句した。 「ホントか分からないが、浜永が離婚手続きをすすめている、という話も聞いたことがあるな。まあ、確かに楠木レベルのオンナだったら、それ位の価値があるのかも・・・」 荒波先輩が新情報をつけ加えてきた。口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる。 「よし!瀬戸!今からすみれちゃんに電話かLINEしろ!“今度、先輩と3人でゴハン行きましょう!”って!ほら、早う!」 高木先輩が、自分のスマホを差し出して電話するように急かす。
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