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持ってきた短いろうそくを美咲の墓の前に置いて、火を灯した。 「しかし、8月17日が三回忌とはね。暑くてたまんねえよ」 亮太は黒ネクタイの結び目に指を突っ込んで緩めた。 美咲は、結婚式の前日に海を見に行くといって家を出たきり、帰ってくることはなかった。 「美咲ちゃんのお母さんも、やっと元気を持ち直したみたいで良かったな」 「まだ本調子じゃなさそうだけどね」 「でも、結婚式前に撮ったウェディングドレス姿の写真を仏前に飾れるようになったんだからさ、良くなってるよ」 あんな遅い時間に海に行こうとする美咲のことを止めておけばと、美咲の母は自分を強く責めたが、飲酒運転のトラックが歩道に突っ込んでくることなど、分かろうはずもない。 「美咲ちゃんも、なんでこんなくそ暑い時期に結婚式挙げようと思ったのかね」 「盆休みで帰省してる時期だから、地元の仲間達が集まりやすいと思ったんじゃないかな。美咲らしいよ」 「美咲ちゃんの魂も大変だよな。迎え盆で実家に帰ってきて、昨日の送り盆で戻ったと思ったら、今日三回忌だもんな。今年の盆は面倒臭がって帰ってこなかったのかもな」 「いや、美咲は帰ってきてたよ」 「えっ?」 「あっ、ああ、あれだ、なんとなくそう思っただけだよ」 「びっくりさせるなよ。まるで、見てきたみたいな言いっぷりだな」 「・・・さてと、そろそろ帰るとするか」 僕は線香に火をつけて手を合わせた。
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