黄昏の青

2/3
前へ
/3ページ
次へ
その日は丁度近所の小さな公園でお祭りがやっていて、私は賑やかな其れに惹かれるようにふらりと立ち寄った。 「お祭りと言えば、かき氷、ラムネ」 いろいろ挙げて辺りを見渡せば、其れを持っている子供や大人が夕日に照らされて、キラキラと綺麗に輝いて見えた。 途端、自分が何処か違う世界に来てしまったような気がして、強い眩暈が私を襲った。 しばらく目を瞑ってその違和感をやり過ごしていると、ふと喉の乾きに気が付いた。 私はラムネを買おうと意気込みゆっくりと立ち上がった。 まだふらふらするものの、両の足を着いて歩けるので、一歩一歩ラムネ売り場へ近付く。 売り場の前まで来ると、売り子の女の子に「どちらにしますか?」と聞かれた。 どうやら2種類あるらしく、私は女の子の差し出した2つのラムネをどちらも買い、再度ベンチに腰掛けた。 2種類のうちひとつは普通のラムネで、もうひとつは薄荷味のラムネだった。 私は薄荷のラムネを開けて一口呷った。 実の所それほど好きではない薄荷、嫌な清涼感が胸を埋めて息が詰まる。 それでも1度空けてしまえば飲み干さなければならないと、一気に喉奥へ流し込んだ。 カラン、とビー玉が音を立てて瓶の口を塞いだ。 まだ口内に残る葉の味にしかめっ面をしつつ私はもうひとつのラムネを開けた。 今度は口直しをする為にちびちびと少しずつ飲んだ。 昔から飲んでいる慣れた味が、久しぶりに飲んだことで更に美味しく感じられて、口内で炭酸がぱちぱち弾けて美味しかった。 飲み終えると、暑かった体温が一気に冷えてゆくような気がした。 ラムネ瓶の中のビー玉がカロンと揺れて、より一層涼しさを強く主張してくる。 ふと私は、目眩さえ感じたこの場所に馴染んでいる自分が居る事に気付いた。 気が付けば最後、何だか居心地が悪くなってきて、早々に家路につこうと立ち上がり足早に公園を後にした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加