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勝手にドン
「お疲れっしたー」
『戸板組』の事務所を後にする青年。
今日もいい汗流したな、なんて思いながら帰路に就いた彼の名は、川住厚也。『戸板組』の新入りである。
厚也は中学生頃から町ではそこそこ有名な『ワル』だった。
高校に進むこともなく、そのまま『ワル』の道に進んだ彼にとってこの仕事を選ぶのは至極当然のことであった。
……
…………そうそう。誤解のないように説明しておこう。
『戸板組』は反社会的団体、すなわち暴力団の類ではない。
至って真面目な建設会社であり、今の厚也は真っ当に生きている。
家に帰って玄関を開けると、一人の女性が玄関に正座して厚也の帰りを待っていた。
扉を開けると、それを待っていたかのように床に手をついて頭を下げる女。
「若、お務めご苦労さまでした」
「それ、刑務所から出たときのやつでしょ!?」
彼女の名は日島葉月。厚也の家に住み込んでいるが、別に彼の彼女でも妻でも、ましてメイドさんの類でもない。
葉月は『川住組』の構成員であり、厚也の『舎弟』に当たる人物である。
これも誤解のないように説明しておこう。
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