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『川住組』は反社会的団体、すなわち暴力団である。
至って真面目なヤクザであり、今の厚也は父から受け継いだこの組で若頭になっている。
葉月が顔を上げると、厚也は持っていたヘルメットを彼女に差し出す。
「大体、そういうなら葉月さんも働いてくださいよ」
「そうは申されましても若、ヤクザもんに働き口なんてそうそうあるもんじゃないです」
「じゃあ俺はどうなるのさ!」
「若は根っからのヤクザじゃないですから。それより、今日の夕飯は若の好きなハンバーグでございます」
白Tシャツにジーンズ、そしてエプロンをつけた葉月は、ヤクザというより若奥様のようである。
実際、葉月は家事万能で料理も上手く、厚也は家のことを全部彼女に任せきりである。
顔立ちもなかなか良く、こんな彼女がいたら――――と思わないでもない厚也だが、彼女の「ヤクザ」という属性が全てを打ち消している。
「若、お風呂になさいますか。それともお夕飯で? それとも……」
「それともっ……?」
「……『カチコミ』になさいますか?」
「いや、その三択おかしいでしょ!」
風呂、夕飯ときてなんで抗争が来るんだよ!とツッコミを入れずにはいられない厚也は、大きくため息をついて風呂へ向かった。
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