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出会い
「遅刻するーー!」
今日は課題を提出しなくちゃいけないのにどうして今日に限って朝寝坊をしちゃうんだろう。
入学して1ヶ月、もう気が緩んでいる。
大急ぎで準備をして駅まで走った。
だけど、いつもの電車に乗り遅れて、一本遅い電車に乗って駅から全力疾走してる。
こんな時に限って、信号も赤。
もうダメ。
あの教授、1分でも遅刻したら授業を受けさせてくれない。
課題の提出が出来なかったら単位を落としちゃうかも。
イライラしながら信号が変わるのを待っていると、
「おばあさん、大丈夫?」
優しい声が聞こえてきて、つい後ろを振り向いてしまった。
長身で爽やかな雰囲気のイケメン男子がフラフラしているおばあちゃんを支えている。
「悪いねぇ。 しばらく前から身体がフラフラする様になって……もう年だからね」
「大丈夫ですよ。 ちょっと待って下さい」
イケメン男子はいきなりブツブツと何かを唱えだした。
何なの?
気になって目が離せない。
「もう大丈夫ですよ」
唱え終わったイケメン男子がおばあちゃんの肩に優しく触れる。
「あれっ、本当だわ」
さっきまでフラフラしていたおばあちゃんの顔色が急に明るくなり、ピシッと背筋を伸ばして立った。
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