湿気

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私たちがいつからこんな風に、どうしようもなく、 絡まってしまったのかは分からない。 付き合い始め、私たちはお互いがお互いを、 宝物の様に思っていた。 彼は私を好きだった。 馬鹿みたいに純粋に真っ直ぐに。 私もそんな彼が好きだった。 今じゃ"好き"だと言葉に出すことは、 呪いをかけることと同じだった。 何か決定的な出来事があったならよかったのに。 私たちは少しずつ、確実に、真っ直ぐに壊れていった。 それでも可笑しなことに、私たちは抱き合う。 抱き合っている、その時だけ、彼は少し素直になる。 一度だけ、彼は私を抱きながら泣いていた。 私はみないふりをして、気付かないふりをして、 無かったことにした。 もしかしたら彼は、 自分が泣いていたことも知らないかも知れない。 どうして泣いたのか、わかるような気がした。 抱き合うその時、ほんの少し残っている愛しさを、 私たちはわざと膨らませて、胸一杯に満たす。 何も疑わなかったあの頃、 自分の中の愛情を信じられたあの頃。 相手を大切に思うことを、 恥ずかしげもなく伝えあえた心地よさ。
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