湿気

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そう、宝物は消えたのだ。 本当に欲しいものではなかったのかもしれない。 偽物だったのかもしれない。 輝かなくなった、要らなくなったものが 心の1番大事な場所に居座っている。 重たくて煩わしい。その場所にあるだけで苦しい。 大人になりたくなかった。 でも、もう無理なのだ。 ならばいっそのこと、早く大人になりたい。 宝物は消えた、それを認める勇気がない。 棄てる強さが、私たちには、まだない。 そう遠くないうちに、私たちは別れる。 私からかもしれないし、彼からかもしれない。 どちらからでも、どんな理由をつけていようと、 大した問題じゃない。 私たちは"ずっと一緒"なんて、お互いまっぴらだ。 それが分かっているから、私たちはいま一緒にいる。 一度手放せば二度と手に入らないということが、 彼の中の、私の唯一の価値なのだ。 空の青より深い青、寂しげで静かな海の青。 彼にぴったりなこの青いシーツは 私たちが抱き合ったあとはいつも、重たげにジメッとしている。 私はこの湿気た関係を、何とか洗いなおしたかった。
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