就職初年度…春の事

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これを機に城島道真と話すようになった。 城島はこの当時、私の親父やこの会社の 剣道部員の何割かを占めるスポーツの強豪高だった私立K学園K高から勢力交代した 東京区内のS学園高等学校……文武両道の男子校の出身だった。 この男も、私と同じく『スカウト』で ここに来た。 確か、S高は進学校……どうしてと聞けば 二年前に名を馳せた先輩が、ここに入社している。 それを追う形でスカウトに乗ったらしい。 「堺さんて…知ってっか?」 堺さんと言うのはこの時代の名剣士。 もちろんその名前も顔も私は知ってる。 剣道関係の雑誌にも団体戦で個人戦で 『S学園高等学校 』 その名とともに 『主将 堺 康一 』 顔と剣道は知っている。 身長は男子にしては小柄な方だ。 顔立ちは細面で、身長が170cm無いからちょっと不利かと思えばそうではなくて 剣風はその小柄な体活かした速攻の剣。 打ちが軽いかと思えば、重たい感じ。 当時の同世代の高校男子の剣道とは 一味違っている。 ちょっとツテが無いから、指導を受ける機会は、なかった。 映像で知るしかなかった。 堺さんの剣道は、小柄な私にとって 神のようなもんだ。 その堺さんが、この会社にいるっ! 城島はこの人がいるからここに入社した。 「えっ?城島くん!堺さん マジでここなの!」 気がつきゃ、城島(ヤツ)のワイシャツの襟掴んで、ゆさゆさして聞いていた。 「あぁッ!マジだよマジ!俺、前日稽古に誘われて行ったもん」 うらやましかろ?♪って 城島は笑った。 うん、うらやましいよ。マジで。
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