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「祐也ァ~!会社の女子には
手を付けないんじゃなかったっけ?」
ひらりと私の隣に来た乾さんに
石野さんが茶化す様に言うと
「春樹…うるせーよ…この子はガキの時からの
付き合いなんだ…なっ、響」
俳優張りの端正な顔立ち
涼やかな目元の長身
剣道部のエース
乾 祐也
いつもなら冷静沈着で寡黙…
クールな印象なのに…
不思議と…軽く感じた…
同期の人達といるから?
だから…普段の自分らしいとこ出てる?
ううん…変わらないか…
Mother・Fではまず見たことの無い表情
ほどよく緊張解けてその年代の大人の男
そんな感じの顔していた…
その顔を見たのは…あぁ…そうだ
11歳の時…乾さんは18歳…
あの夏と…文化祭の時期と…
この時期の私の記憶は曖昧…
けど…思い出すのはあの日に見せた
穏やかな表情…
「この間の合同稽古でキレちゃったねぇ
響ちゃん~♪平気かい?」
石野さんが目をキラキラして聞く
ふわふわ爽やかな柑橘のような甘い香り
ち…近いっす!
「皆さん女子だからって手を抜き過ぎ
はっきり言ってつまらない!
ずっと我慢していたんですよ!
こっちはマジなのに!試合もあるし!」
私は拗ねた!
「女の子だから仕方ないよ♪
まぁ山木夫人位の年齢じゃ
ともかく若い子だしな…久々の♪」
鈴木さんがケラケラ笑った
「だけどオレらはそんなことしないだろ?」
なんて言うからハイと答えて
「えぇ…っと…ね…稽古を
マトモにしてくれるのは…
長瀬先輩、渡辺主将、あと先輩達か...
あとは同期の城島…」
指折り数える
「まぁブチギレたから
次回はみんなマジに相手してくれるよ」
そう…私は五月最後のの合同稽古でキレた
なめ切った稽古内容に…
大人なんだから…抑えないとダメなのに
それを止めたのは…長瀬さん
誰よりも早く止めてくれた
止めてくれて…涙ボロボロの私を
慰めてくれた
その時のこと思い出すと…
今も胸が…キュンとする…
初めての甘い感覚…
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