407人が本棚に入れています
本棚に追加
/683ページ
「…う〜ん……それにしても、長瀬ぇ……
全く顔に出ないのな……」
カラオケも終盤。
その間に、様々な酒を飲ませて頂いた。
個人的に好きなのは、グレープフルーツサワー!
普通、色んな種類を飲むとかなり悪酔いするらしい。
なるほど……、確かに周り見ると俺みたいに次から次へ飲んでる人って、いないな。
みんな飲むペース落ちてきて、中には烏龍茶の人もいて……。
「うーん?そうっすかァ?
すげー美味くて…どんどん飲めちゃいますけどね!」
少し濃いめの水割りをゴクリと飲み干す。
その様子見てる先輩方は俺にこう言った。
ザル……それも網目のデカすぎるザル
その夜は、酔ってるみんなをそれぞれ部屋に送りお開きとなった。
ちっとも酔ってない俺は、大好きな温泉に行った!
ここは温泉ホテルと言うだけあって、最高にご機嫌な良い温泉で……星空眺めて露天風呂でグーンと手足伸ばした。
マジで幸せな時間だ。
季節は巡り……、待ちに待った春がやって来た。
四月一日の入社式。
バスに乗って、今年度の新人達が研修合宿所へ向かって出かけて行く。
その日の10時過ぎた辺りの事だ。
製版室へ行ってオーダーの後、通路に出た時
スーツを着込んだ工場長と、渡辺さんがいた。
聞けば……、これから今年度の入社式へ
出かけるという。
「今年の新入部員に会ってくるからな!」
にしし……と楽しそうな渡辺さんに、
「今年は剣道部二人か…」
工場長が聞くとうなづく渡辺さん。
「それから……久しぶりの女子部員ッスよ…」
女子部員?あの娘か?
思い出すあの大きな瞳と、唇尖らして怒る顔。
もう1人の新人は、アイツかな?
堺さんの後輩の城島ってヤツ。
なかなか面白いヤツで、剣道もなかなかだ。
ちょっと顔はうろ覚え。
なによりも、あの娘に会う工場長と渡辺さんが羨ましい。
「何も知らないでアイツら大喜びだろうな~♪一流ホテルで入社式だもんナ…」
ククっと笑う渡辺さん。
「可哀想だが、通過儀礼だよ。
我社の製造部門の……なっ!」
工場長は渡辺さんに言い、
「そう言えば、キミ長瀬くんだよな?
一ヶ月遅れで去年の五月に入社した渡辺の取っておき
君はここで入社式と研修とだったから
知らなかったんだよな。
ある意味、君は運が良くて運が悪い」
その意味は、後ほど4月入社のほぼ同期の
小泉に聞いてハッキリとする。
……どうか…無事に研修終えてきてくれ!
俺は切に願った。
俺の後輩になる新人二人の無事を
特に山口響の無事を…。
厳しすぎて脱落者アリの
研修合宿なんだよ…
実際は…。
最初のコメントを投稿しよう!