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それぞれのテーブルで食事をしながら談笑。
何人かの新入社員が何かしらの実業団に入団予定だ。それに関する指導員に付き添われて
挨拶とかお酌とかしている。
その様子は、ちょうど…結婚式披露宴みたいだ。
私と城島くんも、渡辺さんに連れていかれて
本社の剣道部の人の所とか、関西地区の剣道部の人の所とか、九州・沖縄地区とかの剣道部、東北・北海道地区とか…剣道部関係ばかりその所属の監督クラスの方々に色々会っては挨拶して話した。
必ず聞くのは、「乾 祐也」の名。
仕方ない、全グループの剣道部で行われる全国大会での頂点に居続ける人だ。
去年、V4決めたと聞く。
今年はV5達成しちゃうか?そんな話…。
たしかにとにかく強かった。
去年の様々な会社の実業団で行われる秋季大会でも、女子の試合見ながらちらと見た準決勝と、決勝……そこでも強かった。
その時浮かんだのは準決勝の相手。
垂れネームの漢字二文字『長瀬』
その名とともに、脳裏に浮かぶ茶がかった瞳の凛々しい男性の笑顔。
『長瀬』と言う名字と重なる。
準決勝は、とても短い時間で決着ついちゃったけど、全くの無名高出身の長瀬さんは、乾さんに恐れを抱くことなく、真っ向勝負を挑んだ。
あっ……、いやだ……なんで?
私のお弁当の唐揚げと、タルタルたっぷりのエビフライをひょいと盗って、美味しそうな顔した奴なのに…。
ふと思い出した去年の秋の出会い。
席に戻る途中で、渡辺さんに聞いてしまった。
長瀬さんって名乗った人の事。
「ン?なんだァ…お嬢ぅ
アイツの事興味あんのか?」
冷やかすというか、なんだか……渡辺さん、優しい顔して(強面)聞いてくるから……。
はっ!
と気がついて、
「違う…違います!あの人…ねっ、えぇっと!去年の秋季大会で…唐揚げとかエビフライとか……とにかく!お弁当の恨みですっ!」
なんて言ってしまった。
「なんだそれ?」
渡辺さん笑って
「会いたかったら…これからの研修
生き残って来い!」
急に真面目くさって、私の背中を
バッチーんッ!と叩いた。
「渡辺係長!女の子なんですから!
叩かないでください!」
また、渡辺さんは坂本さんに叱られた。
そうこうしているうちに、シメのデザートとコーヒーあるいは紅茶などで……
お祝いのフルコースは終わった。
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