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指示をされるままに、私達新入社員一同は荷物を手に外へ出る。
ホテルの広いロータリー……。
花々に飾られた噴水が真ん中にあって、ホテルの敷地内の桜もみんなキラキラしている。
ちょっと歩くとバス専用の駐車場。
会社のバスではなくて、こちらの観光バス?
「おっ?予定いきなり変更で
湯浅君とこのS工場見学からか?」
作業着を身に付けた男子の集団の誰かがこう言うと、そうかもな~なんて声が聞こえてくる。
パリッとノリ効いたスラックス。
ン?上着のファスナー開け放してる。
城島を見ると、細いストライプの涼しい布地の襟付きシャツが見えている。
作業帽はキャップ形で、ツートン。
スボンは、しっかりとベルト閉めてる姿は、
ちょっと見た目がまるで野球のユニフォームぽくて、カッコイイ!かも!思い、
同時に羨ましい…と思った。
出会うべく剣道部の先輩達……。
あの長瀬さんや乾のにい…いや、乾さん、彼らと同じ環境で稽古するべく、交代勤務の
オペレーターで製造を希望していたのに、
「履歴書の写真」その見た目で、なんだかんだと現場の男子社員に最も接触の多く、結婚率の高い「検査課」に配属が決まっちゃってる。
だから私の身につけてるのは、女子の制服。
一応、現場も廻るから、そんなに体の線目立たないけど。
「見た目はすげー良いよな~♪
良いけどさぁ?…」
なんて茶化す城島に、
「…検査課で揉まれるうちに
山口さんはその通りになるわよ♪」
Motherの指導員の坂本さんが言う。
その意味…は、研修合宿から帰ってきてから
わかるんだけど……。
昨日の入社式の前に、メイクとかしながら
坂本さんてば、
「山口さんは…剣道部に入団でここに来たのよね?
聞いてると思うけど……なかなか女子選手は剣道部に1年も持たないのよ……
英美さんが必ず、会社の看板背負って
堂々と戦う私の後継として育てる!
なんて言うけど…きっと無理……
山口さん、見て…鏡の中の貴女
綺麗よね?
オペレーター?何言ってるの?
あなたは女の子なんだから…女としての幸せ…を…ねっ♪」
なんて不思議な事言っていた。
私は、仕事しつつ剣道も続けられる!そう聞いてスカウトにのったのに、この人は何を言っているのだろう?
昨年の秋、出会った山木英美さんが私を選手として育ててくれる!
こんなにも心強いって事ないのに!
「それでは、昨日のように地区別に
バスに乗ってください~!」
その坂本さんが指示を出していた。
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