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「なぁお前か?今度入る奴って」
視界に爽やかな笑顔が入った。
凛々しい顔つき。たぶんハンサムの部類。
茶がかった瞳が素敵。
その瞳と同じ様な色の髪。
そしてこの声……。
この人……って?まさか
ドキリとしながら左袖を確認する。
白生成の道着袴姿という事はここの選手。
近い未来、私の先輩となる人。
左袖の刺繍は……『火』?
『火』という事は……?
この人があの試合の……長瀬さん?なの?
そう思い聞こうとした瞬間!
「お前さぁ部長達の高校の二軍潰したって
ほんと!?
○○女子ってさ剣道は無名じゃん
スゲェな!」
一方的に目をキラキラさせてまくし立てる
声が、ちょこっとハスキーで聞いてて心地いいのになんかね残念かも。
見た目と違って残念かもしれない。
「あの〜正確には中三の時です
そんな昔のこと言わないで下さい
それより先に名を名乗れば」
口を尖らす。私の心をときめかせた剣道をする人がなんだかちょこっと違う。
爽やかなお兄さんをイメージしていたのに!
いや、実際私より年上なんだけど。
「ふっ…なんかお前面白いな」
その人は、たぶん長瀬さんは
突然私のお弁当に手を伸ばし
「いただきッ!」
唐揚げをつまみかじりやがったッ!
「あっ!な……私のッ!」
私の唐揚げに何をと言いかけた時
「俺は長瀬……長瀬慶司
覚えておけ、待ってるから」
爽やかな明るい笑顔で
人の唐揚げ食ってカッコつけてる。
素直に言えば、見た目はかっこいい。
背も高いし、道着と袴を正しく美しく着装するそのスタイルも実にカッコイイ。
好きなタイプかもと思わず見とれていたら
さらにエビフライ持っていかれた。
「こらっ長瀬くん!」
同時に山木さんが怒ると
「ははっ♪挨拶…挨拶ッスよ!」
長瀬くんと呼ばれた陽気なハンサムは
「じゃあな~山口 響っ!」
手を振って逃げていく。
「なにが挨拶なのよッ!女の子のびっくりさせて
びっくりしたね山口さん
あとであまったお弁当あげるからね♡
一応、今の子の説明しとくわね
あの子はあなたと、城島くん 、ふたりの先輩になるしね
長瀬慶司
無名高だけどまだまだ強くなりそうなの
あー見えて仕事も真面目でいい子だよ
ウチの会社強豪高ばかり集めてたけど
無名でもいるの、キラっとしてる子
山口さんも本社の人が見つけてきたのよね
でもねたいていの女の子
入部するけど一年持たないのよ
着飾る事女の楽しみ見つけてのめり込んじゃうのよね....大丈夫よね?山口さん」
「大丈夫です
こんなに楽しそうな剣道部なのに
辞めたら損しちゃうかも」
「春、待ってるね
さぁ今度は団体戦みましょう」
この日がたぶん出会いの0
運命の人と変な出会い方をこの時
私はしてしまったのです。
もちろん、お弁当もうひとつもらったよ。
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