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私達女子新人達は、再びこの研修宿舎に来た時に通された部屋にいた。
目的は、着替えだ。
研修中でも、全国の工場や営業所と同じく
午後五時を超えた時点で業務は終わる決まりとなっている。
そのあとは自由なんだけど……。
今は研修合宿中!
しかもどこかわからない所でだ。
H市街まではバスでしか行けないし……、せめて事務服や作業着脱いで、派手にならない程度の私服に着替える。
修学旅行の様なシンプルでカジュアルなものを、普段の私服として持ってくることになってる。
「ねぇ〜ぐっちいお昼の後さぁなんで、
城島くんと二人でいたの?」
お気に入りのリーバイス、シンプルな白Tシャツの上に前ファスナーの定番カラーのグレーのパーカーを羽織る。
さっきまで、ストッキング履いていた足は素足だ。
身支度が終わって、片付けしている時にユッコに聞かれた。
「違うよぉ、アイツが勝手に私に着いてきただけだよ」
マジでそうだから!
その理由が、せっまい剣道界のそんな人間事情って事なだけの事。
「私はさ、何処かで昼寝って思っていたんだけどさ」
それもマジ。
どこで昼寝しようと思って、館内案内見ていたらアイツが声掛けてきた。
話的にも質問的にも、繊細過ぎること。
城島のやつ、気を利かせて…中庭でとそこへ移動して話していた。
季節は4月。
好きな桜の花が美しく咲く季節。
でも、それは日本中にあるソメイヨシノじゃなくて、
あぁ、桜色ってさこんな色なんだなぁ……
そう思わせるほんのりとした花の色。
ピンクと言ってはいけない美しい桜色
そうだ、桜貝の色に近いそんな桜色。
日本には綺麗な色を示す名前たくさんある。
「変だって…みんな言っていたの。
二人で中庭でさ、ぺったりで…いてさ」
ユッコはその綿菓子のようにふわふわ可愛らしい顔を曇らせて言った。
確かにウチら話してる時、他にもあとから何人か中庭でのんびりしていた。
手を振られたから振り返したりして、普通だったけどな。
そのあとなんか一部の同期の様子が…変だった。
「ねっ!宿題の3番の答え!
男の子顔書いてあったでしょ?
彼氏でしょ?一緒にいつも居たって
隅っこに書いてんのに!ダメじゃん!
よそ見しちゃ!ぐっちいっ!信じられない」
突如、横から口挟んだのはひとみ。
幼なじみの彼氏とMother・Fに一緒に入社した一番の強者だけど……。
研修始まってから、あまり二人でいないみたい。
萩原くんは、同じ野球部のメンバー達と
ほとんど一緒にいる。
そんな苛立ちもある?
なんか当たられた気がする……。
「私はけっこう、山口さんの席に
近いから、3番の理由わかるけど
これ説明しないとわからないわよ」
こう言うのは、キミィ。
眼鏡の奥の目が超厳しい!
この宿題…本当に厄介だ。
説明しないと確かにわからないような事、書いた私も悪いんだけど。
講義始まる前に聞かれた数人には、この問三の意味を説明させてもらったけど、本当に
わかりにくいよね……、確かに。
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