就職初年度秋…かっこいい娘 (慶司18歳)

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それから、数週間経った11月のとある日曜日…。 生成り色の袴を翻し、俺は飛び込む。 上がる赤の旗。 よし!あと一本! 初秋季大会…。 先輩達が言うには、秋には魔物が住んでいる。 「怪我すんなよ〜 負けても気にすんなッ! この後の酒が上手いんだよ」 勝利の美酒よりも、試合という緊張から解放された打ち上げのはじめの一杯。 この為に、先輩達は戦うという。 会社の肩書きも大切だけど、これは本社の連中に任せりゃイイんだッ!……て言うけど 俺は全力で行く! そもそも俺、未成年だし。 飲めないし。 あと2つ勝てば憧れの乾さんと戦える。 その時……面金越しに、ここには似つかわしくない人がいた。 肩までのほんの少しウェーブが裾にかかる黒髪の女子高生。 真っ黒い大きな目の子だ。 顔立ちだけ見るときれいめの男の子みたいだ …コイツかな?… 目を細めて見てしまう。 俺の仕入れた情報の新人のひとりはとある女子高の女子だ。 やまぐち....きょう?だったよな…? 「長瀬っ!」 先輩の声。 はっと気づく。 「小手あり!」 上がる白い旗。 やべぇ〜! あっ....彼女は山木夫人に連れられて 女子の試合を見ていた。 それよりも、まずは集中ッ! 取り返さなければ! なんとか勝ち抜いてベスト4 だけど、残念ながら乾さんにほとんど触れることなく、完敗してしまった。 インハイ二回出場してうち1回はタイトル掴んでる。二度目は謎の決勝?準決勝敗退だけど。 その他もろもろの高体連のタイトルに名がある。 この会社、本社も含めた全国・全グループの大会の覇者。 V5(試合は20歳からと決まってる 大卒の本社や営業に合わせてんだろうな。 たぶん…←正解!)って言うのは、伊達じゃない! 強過ぎる!!ちくしょう! 試合の流れを思い出す。 俺は会心のベストなタイミングで、面へ飛んだ……はずなのに!気がつけば…逆に俺の面を斬りさって行きやがった! 乾さんは強い!マジで強い! あの人の剣道は……竹刀で打たれる感覚よりも、斬られる…! その表現の方が正しい…! 主催の会社の役目は色々とある。 特に新人の俺たち三人 俺・小泉・古畑 試合が終われば走り回る 白に近い生成りの道着と袴のまま… あっ!それは俺だけだなぁ♪ 俺はそれでもベスト4 表彰式があるからそのまま。 結局、決勝戦は常連の二人 昼は特に忙しい俺たち。 来てくれた各団体に 飲む物とお弁当を食堂から 運び出して箱ごと渡していく。 今日は…唐揚げとおっ!エビフライ! 美味そうな弁当だ。 それが俺達新人三人の仕事 あの見つけたあとの試合の時 あの子はどこに行ったのかな? 見ていた小泉に聞けば… 「山木夫人が連れて案内してるよ」 まだ帰ってない....それは確か そう聞いたけど 俺は急いで与えられた仕事をこなしていく なぜだか知らないけど… あの瞳が忘れられない 声を聞いてみたい。
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