402人が本棚に入れています
本棚に追加
/683ページ
「お前ら数えでは20歳…だからいいよなぁ!」
グラスにめいいっぱい注がれる泡立つ 麦酒。
今年成人式の社員は、それぞれの地元の成人式に出席する者もいれば、俺の様に会社の成人式 (これは工場だけの行事) だけの奴もいる。
俺は、親父が写真家なだけに張り切ってるから、新しく仕立てたスーツで写真だけ撮りに里帰りしたけど。
それらが終わったとある日の事。
「とにかく…おっめでとー!
長瀬くん!小泉くん!古畑くん!」
陽気なオッサン…いやいや先輩、山木さん(山木夫人の旦那。技術課のリーダーで夜勤もこなす。タフな人)が、うぇーい!と陽気にはしゃいで、何度も何度も乾杯しまくる。
「山木さん、嬉しいンだな〜
今回は脱落者無しでここまで来たから」
俺の隣で乾さんはうっすらと笑む。
実業団と言っても学校の部活の楽ちん版と言った方が正しい。
メインの仕事して、稽古日に稽古する。
時には有志募って、自主的に稽古する。
仕事と稽古……。
両立が出来なくて、退部する者がここ何年かあったらしい。
俺達30期のひとつ上の堺さん。
彼の時もやはり数人いたそうだ。
両立出来なくて、あるいは選手であること諦めて退部届け出して、一般社員へとなっていく。
「楽しいけど、厳しい…」
ちなみに女子部員は、不思議と1年持たずに辞めていく。
それは乾さん達のあとの世代の話で、
「乾さんにこっぴどくフラれた」
とか
「剣道まっすぐに考えてる女ほど
社会人になって色々と華やかな世界知って
剣道自体を辞めてしまう…」
とかでなんだかなぁと思う。
そういう事で、女子部員は山木夫人一名だ。
成人式が終わったとある土日にかけて、ウチの剣道部は毎年この海沿いの温泉旅館で
派手に新年会をする。
美味い海の幸の料理と美味い酒と宴会芸の一次会。
二次会は、若い先輩達はさらに上のOB達に誘われて、ストリップやら風俗やら、出かけていく。
これは、独身の人間の話で、既婚者の先輩達は奥さん裏切る真似はしない。
その辺のところ、なんか安心してる俺がいた
「奥さん泣かせる奴は最低だよ。」
カラオケボックスで、1曲歌い終わった山木さんが水割り片手に笑う。
「英美ちゃん命!だもんナ!」
その英美さんは、女性社員一人はねって
とかなんとか言って今回はおやすみ。
「二人にイチャイチャ見せつけられなくて
よかったぜ!」
皆笑っていたっけ。
この中のメンバーに乾さんがいる。
それはなんだか前々からで
同期の四人と一緒に、ここで有名なストリップ劇場へ行くことパスしていた。
理由は、「去年見たから」。
裏の顔知ってる俺は、女の裸なんて見飽きてるから行く必要無いんだな~、なんて勝手に解釈していた。
最初のコメントを投稿しよう!