就職二年目…春・俺の日々(慶司・19歳)

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うちの会社はけっこう休暇多い。 誰かのお土産が、よく中央事務所のテーブルに置かれる。 今日のお菓子は、S県名物うなぎパイと、 コッコ。 コッコとは、一口サイズの小さなカップケーキだ。卵色のノーマルと、抹茶味の二種類が置いてある。 N県からS県に嫁いだ親戚がいる俺には お馴染みの美味しい菓子だ。 工場長が全ての部署に土産として配ったものだ。 俺も印刷課で食ってるし、貰ってるからいらないですと言ったけど、 「若いんだから食えっ!大きくなれないぞ!」 「それ以上でかくなったら怖いって… 松岡みたいに細けりゃあ多少違うけどよ」 なんて勧められたのでいただく。 すると、そうそう食え食えとにこやかに笑う。 ここの人たち笑うの好きだよな。 何してる?と聞かれたから、 「稽古相手探してる」なんて言うと はぁ?と言われる。 けれど…この人たちなら平気というか、乾さんならなんて思って事実を言うと… 「弟子は師匠に似るって言うけど そうだなァ~乾っ!」 ここの人達は俺と川島さん以外、乾さんの裏の顔を知らない。 社内外の女子達に、羨ましい位にモテるくせにクールに跳ねのける仕事一筋、剣道一筋の堅物…そう思っている。 「……まぁな…」 うっすら笑んでマグカップ傾ける乾さん。 なんとも言えない顔して口角上げる川島さん。 甘いもの取って一息の後、テーブル自体キレイにして解散した。 二直と三直のお菓子はわけて各チーム用の菓子入れに。 一直の1チームで配って残ったぶんは、1チーム用の菓子入れに。 その辺は仕上げ加工のルールらしくて、印刷課の早い者勝ちとは違うのは羨ましい。 「あぁ!いたっ!乾っ!」 帰ろうとしたとこで、事務所にすげぇ勢いで入って来た人がいた。 それは1チームの直長(係長)兼任の日勤者・井野課長。 (現在、交代勤務の仕上げ加工課1チーム その席が空席…その理由は乾さんにあると聞く) 「お前んとこの人員の事なんだけどな やっぱり、俺は思うのさ…」 「いや、井野さん…俺の所は補助程度の バイトくんいりゃ…二週間は凌げる そう言ったはずですが?」
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