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第5話 地上へ
うれし荘102号室へと続く扉の、右側に妖魔大王、左側に暗黒騎士が手を添えている。
「じゃあいくぞ。ただし決して強すぎず弱すぎず、あくまで優しくだぞ」
妖魔大王が暗黒騎士に念をおす。
以前扉を強く押しすぎて、上に乗っていた畳ごと扉を吹き飛ばしてしまった事があったのだ。
吹き飛んだ畳は天井にぶち当たり、凄まじい轟音と共にアパートが揺れた。
あの時は上の住人と大家にもの凄く怒られた。
「う~難しいッスね」
縦穴はそんなに広い訳ではない。
大の男が二人もいればぎゅうぎゅうである。
「もうちょっと詰めてくれ」
「えー。こうッスか」
狭い場所で体勢を入れ替えながら悪戦苦闘する二人。
その時、妖魔大王のはねた髪の毛が暗黒騎士の鼻の中に侵入した。
「あんっ。大王様、そこはダメッ……」
「え?」
少し頭を傾ける妖魔大王。
その動きが更に暗黒騎士の鼻の奥を刺激する。
「あ……」
「あ…………」
「あ、はっくしょーーーーい!!!」
暗黒騎士が豪快にくしゃみをする。
と同時に、力を入れすぎたのか、扉が勢い良くスポーンと飛んで行った。
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