第4話 優しく押してね

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第4話 優しく押してね

 人化の術を発動させ、白い煙に包まれる暗黒騎士。  数秒後、煙の中から人の姿となった暗黒騎士が現れる。  その身体には漆黒の鎧では無く、上下の黒いジャージを身に着けている。  長身で体格はやや細身だが、ボクサーの様に絞り上げられた肉体には貧弱な印象は無い。  足元は黒いスニーカーである。  無造作に背中の中程まで伸びた黒髪はやや乱れている。  切れ長の目にシャープながらも端正な顔立ちは、地上の商店街には隠れファンも居るほどである。  腰には魔剣「エネギリウス」を差しているが、今は接着剤で修理中だ。  職務質問を受けて以来、特殊な妖気で包んでいる為、人の目に映る事は無い。 「お前、相変わらずイケメンだなー」 「そうッスか?」 「お前を見る肉屋のおばちゃんの目が肉食獣の様だぞ。お前目立つんだから気を付けろよ」  おばちゃんとは、商店街にある肉屋「ミート田島」の女店主、田島 ヨシコ(58)である。 「ええっ。初耳ッス。あのおばちゃんいつもコロッケおまけしてくれるんスよ」 「やっぱりなー。おばちゃん、絶対お前に気があるぞ」 暗黒騎士は「参ったッスー」と言いつつ、さりげなく話題を変える。 「そうそう、目立つと言えばデスクイーンの方がやばいッスよ。あいつ今アキバで地下アイドルやってますから」
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