第4話 優しく押してね

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「えっ!ほんと!? 知らなかったよ……」  絶句する妖魔大王。 (最近良く地上に行っているのは知っていたが……)  しかし部下のプライベートには口出しをしない主義だ。 「ライブとか行った事あるのか?」 「一回だけあるッス。ファンがすげーいて、オタ芸ってやつを始めて見たッス」  誰にも話していないが、その時見たオタ芸に感動して暗黒騎士は今こっそりと練習中である。 「しかも今度CD出すらしいッスよ」 「本格的じゃないか! よしCD出たら100枚買っとけ」 「OKッス! てかそろそろ大王様も人化しましょうよ」 「あっ。そうだな、そろそろわしも人化するか」  そう言うと人化の術を発動させる妖魔大王。  もわもわっと白い煙に包まれる。  やがて煙の中から現れたのは、くたびれたジーンズに、Tシャツを着た一人の男。  Tシャツの中心には「洋間大王」と書かれている。  元々は無地のTシャツを買ってきて、部下にプリントを任せたのだが、漢字を間違えられたのだ。  最初は「洋間に凄くこだわりがある人みたいじゃない?」と嫌がっていた妖魔大王だが、今ではお気に入りのTシャツである。  足元には青色のサンダルを履いている。  身長は暗黒騎士よりは頭一つ低い。  中肉、中背。  至って普通だ。
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