第4話 優しく押してね

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 縦穴には長い長い鉄のハシゴが備え付けられている。  しかし妖魔大王と暗黒騎士がその梯子を使う事は無い。  二人は縦穴の真下へ来ると、すっと宙に浮かびあがる。  そしてぐんぐんと縦穴の出口目指し上昇していく。 「これハシゴじゃ無くてエレベーターにしたいなー」  妖魔大王が上昇しながら下にいる暗黒剣士に話しかける。 「そうッスか? 俺はこのままでもいいッスよ」 「お前はな。でも宙を飛べない者は不便だろう」   「あーだるま男爵とかッスか? でもあいつ、この前ここの壁を『ぞいぞいぞいっ!!』って言いながら、転がって上ってたッス」 「あいつは変態だからな」 「あ、でも途中で力尽きて落ちてきたッス」 「じゃあ、ダメじゃーん」  ハシゴの先は木で出来た扉の様な物で塞がれている。  把手は付いているものの、穴を塞いであるだけなので扉というよりは蓋に近い。  そこには「優しく押してね」と張り紙がしてある。  その張り紙をしたのは他ならぬ妖魔大王である。
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