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「ここはどこ?」
妖魔大王がやっとの思いで言葉を絞り出す。
草原には背の低い木がぱらぱらと生えており、夜空には満天の星空が輝いている。
地平の向こうには雄大な山脈が連なっているのが見える。
そして、二人から少し離れたところには、先程飛んでいった木の扉と、三メートルはあろう大きな岩が転がっている。
どうやら扉の上に乗っていたのはこの岩の様だ。
地面に落ちた衝撃で真ん中から二つに割れてしまっている。
「核戦争でも起きたッスかね」
暗黒騎士も事態を飲み込めずにいた。
「アフリカのどこかかな?」
妖魔大王は、昨晩寝る前に見た大自然チャンネルを思い出していた。
何となく似たような風景だった気がする。
「グルルル」
と、不意に唸り声が聞こえてきた。
二人の周りをオオカミの様な獣が、群れをなしてとり囲んでいる。
「野良犬か? あれ? 犬って尻尾が三本あったっけ?」
「ハスキー犬ぽいッスね。尻尾は一本のはずッス」
「いや。わからんぞ、人間は改良が好きだからなー」
その獣はオオカミの様な外見をしているが、妖魔大王の言う通り尻尾が三本生えている。
「サードウルフ」と呼ばれる魔物である。
妖魔大王達との距離をじりじりと詰め、包囲網をじりじりと狭めていくサードウルフ。
今にも襲い掛からんと二人のスキを窺っている。
しかし、先に動いたのは暗黒騎士であった。
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