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「もうー」
「大王様、大人げないッス。飽きるまで噛ませてやればいいんスよ」
「お前はム〇ゴロウさんか」
大王はお気に入りにTシャツが汚れていないかチェックしている。
妖気でカバーしていたので穴こそ開いていないが、よだれでべたべたである。
「あーあー。これは奪衣婆に怒られるかなー」
奪衣婆とは妖魔帝国の洗濯部門の責任長を務めるお婆さんだ。
元々は三途の川で亡者の衣服をはぎ取っていたのだが、その衣服の回収力の高さに妖魔大王が目をつけ、地獄からわざわざスカウトしてきたのである。
妖魔達の中には着替えを面倒くさがる者も多い。
「洗濯物の下に入れちゃえばわからないッスよ」
「そーだなー」
顔を見合わせて、いひひと笑う妖魔大王と暗黒騎士であった。
◆
「よしっ!」
妖魔大王はまだお座りを続けているサードウルフに対して命令をする。
お座りから解放されたサードウルフ達は、尻尾を振って妖魔大王の周りに群がってきた。
「よしよし。お前らもう人間を襲うんじゃないぞ。」
妖魔大王はひとしきりサードウルフ達の頭を撫でてやると、次の命令を出す。
「ハウス」
サードウルフ達は「くーん」と鳴くと、名残惜しそうに草原の中へと消えていった。
「可愛いッスねー」
「噛み付かなきゃなー」
「いや、それはエゴッスよ」
「えっ!?」
ドキリとして暗黒騎士を二度見する妖魔大王。
何となく暗黒騎士は物悲しそうな顔をしている。
(聞かなかったことにしておこう……)と思う妖魔大王。
(エゴって何て意味だったッスかね……)と思う暗黒騎士。
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