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彼こそが強大な力にて、千年もの長きに渡り、妖魔帝国を統べてきた妖魔大王である。
今、この場所には既に一切の生命が存在しないかの様に思われた。
と、妖魔大王の額にある第三の目がうっすらと開く。
そして、右…………左…………と、非常にゆっくりとした速度で周りの確認を始める。
しばらく周りを確認すると、その巨体からは想像も出来ない小さなささやく様な声で、妖魔大王が呟く。
「……あいつら……帰ったか?」
修学旅行で見回りに来た先生に、寝たふりをする生徒の様である。
「……そうみたいッス」
どこからともなく返事が返って来る。
これまた蚊が鳴く様な小さい声である。
「そうか」
それを聞いて妖魔大王はゆっくりと慎重に上体を起こし始める。
「ふう。いたたた」
横にある玉座の手すりにつかまりつつ、なんとか立ち上がる妖魔大王。
そのまま中腰の姿勢で玉座の前まで移動をする。
「あー。よいしょっと」
ドスンと玉座に座る妖魔大王。
やがて床に倒れていた者達も、もぞもぞと次第に動き始めた。
「ひどい目にあったな……」
「うわー血が」
「痛かったねー」
全員死んだフリをしていたようだ。
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