31人が本棚に入れています
本棚に追加
第7話 深く深く突き刺さる
悲鳴がした方向へ走る妖魔大王と暗黒騎士。
松明の明かりが遠くに見える。
悲鳴は恐らくその辺りから聞こえてきたが、まだ少し距離があるようだ。
足元には街道らしき道が通っている。
その街道から少し外れたところに横倒しになっている馬車が見える。
倒れた際の衝撃からか、馬車本体から外れて横倒しに倒れている車輪。
馬は逃走して既にこの辺りにはいない様だ。
事故か?
妖魔大王は一瞬そう思ったが、すぐに否定した。
馬車の前には御者だろうか、男性がうつ伏せに倒れている。
しかしその背中は大きく切り裂かれ、血でどす黒く染まっていたからだ。
恐らく斬られたのだろう。
既に息は無い。
街道沿いに走ると松明を持った複数の男達がいた。
その男達に囲まれる様に、女性が倒れている。
この女性がおそらく先程の悲鳴の主だろう。
だが遅かったらしい。
背中にはいくつもの剣が刺さり、既に絶命している。
女性のそばには、目が見えないのだろうか、包帯で眼を隠した少女が「ママッ!ママッ!!」と女性の衣服を掴み、必死に揺らしている。
女性はピクリともしない。
もう二度と少女の呼びかけに答える事は出来ない。
その光景を七人の柄の悪そうな男達が、薄気味悪い笑みを浮かべながら見ている。
この辺りを荒らしている盗賊団だ。
「お前ら、何をしている」
妖魔大王が静かに問う。
その声に気づいた盗賊達が、一斉に妖魔大王と暗黒騎士の方へと顔を向ける。
「ああ? なんだ、ぼさぼさ頭」
「ぷーっ。大王様、ぼさぼさって言われてるッス」
暗黒騎士は空気も読まずに笑っている。
「無造作ヘアですけど」
妖魔大王がぶすっとして答える。
「てめえもなに笑ってんだ! こら!」
一人の盗賊が足元に落ちていた石を拾い暗黒騎士に投げつける。
最初のコメントを投稿しよう!