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「てめぇら……」
暗黒騎士から、ずるりと殺気が漏れ出してくる。
その黒く燃え上がる炎の様な殺気は、辺りの濃い闇を更に深く染め上げている。
幸か不幸か、目の前の盗賊達の中には、その殺気に気付ける者はいない。
「大王様」
暗黒騎士は魔剣の柄に手を当てながら、何の感情も感じられない声で妖魔大王に話しかける。
その漆黒の瞳は、まだ女性に剣を刺している盗賊達を見据えている。
「ご許可を頂きたく」
暗黒騎士がすっと目を閉じ、頭を下げる。
「うむ。だが一人は……」
妖魔大王が「う」と言った瞬間に、暗黒騎士は鞘から魔剣を抜き、盗賊達の元へ駆け出していた。
盗賊達の間を黒い稲妻のごとく、一筋の影がジグザグに走る。
次に妖魔大王が「む」と言い終わる前に、宙に打ち上がる七つの首。
その後ドサッと盗賊達が倒れる音がした。
そして少し間を空けて、ボトッ、ボトッと七つの音が暗闇に静かに響いた。
妖魔大王の横には、既に暗黒騎士が戻ってきていた。
その両手には少女を抱えている。
「……よくやった。だが人の話は最後まで聞こうな」
「え? 何の事ッスか」
暗黒騎士は本当に何の事かわかっていない。
あまりの怒りに半ば身体が勝手に動いていたのだ。
「……まあいい。てか魔剣折れてたんじゃないの?」
「ア○ンアルファは偉大ッス」
そう言うと暗黒騎士は少女を、優しく地面へとおろした。
少女は十歳位だろうか。金色のショートヘアが良く似合う。
両眼には包帯がまかれており、表情を窺い知る事は出来ないが、身体は先程からぶるぶると震えている。
随分と怯えているようだ。
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