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汚れてしまってはいるが、レースが幾重にも編み込まれた白いドレスを着ており、少女の育ちの良さが感じられる。
妖魔大王が優しく話しかける。
「もう大丈夫だよ」
「マ……ママ……は?」
少女は怯えながらも必死に話す。
妖魔大王はぐっと唇を噛みしめ、諭すように少女に話しかける。
「君のママは、遠いところに旅立たれたよ」
その意味を理解したのか、少女は地面に座り込む。
やがてせきを切ったように激しく泣き出した。
こんなに幼い子が。
なんと不憫な。
妖魔大王は目を伏せる。
「ぐすっ」
暗黒騎士は背中を向けている。
まだ幼い少女の泣き声は、美しい満天の星空の下、響き渡る。
そして妖魔大王と暗黒騎士の心に、深く、深く、突き刺さった。
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