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第8話 アメちゃん食べるかな~
「すーすー」
少女は妖魔大王の膝の上に頭を乗せて、安らかな寝息を立てている。
泣き疲れて眠ってしまったのだ。
「終わったッスー」
と、暗黒騎士が戻ってきた。
少女の母親と御者の二人分のお墓を作り、遺体を埋めてきたのだ。
「もう土も掛けましたッス」
「ご苦労様。本来であれば、親族等に連絡するべきだろうがそうもいかん。獣も多いから、遺体を放置する事も出来んからな」
妖魔大王はそういうと、少女の頭を優しくなでる。
「女性のめぼしい持ち物はこれだけッス」
暗黒騎士が銀色の鳥の形をしたブローチを取り出した。
母親が身に付けていた物だ。
少女にとっては母の形見となる品だ。
「綺麗だな。もう少し落ち着いてから渡すか」
「そうッスね」
暗黒騎士はズボンのポケットに両手を入れて、小石を蹴っている。
「ところでこの子どうするんスか。ここには置いていけないッスよ」
「そうだなー。まずは父親か親族を探さないとな。だが、一旦は帝国に連れて帰るぞ」
「さすが大王様ッス!」
今まで妖魔帝国内に人間が足を踏み入れた事はほとんど無い。
ましてや、大王自らが人間を招き入れる事など、長い妖魔異国の歴史の中でも稀であった。
「なあ、この子の目は治るかな?」
「んー。Drに見せなきゃ何とも言えないッスけど、生まれつきじゃなければ可能性ありッスね」
「そうか」
ホッとする妖魔大王。
そして膝の上の、まだ涙で包帯が濡れている少女を見ながら、悲しそうな表情を見せる。
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