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「母親が殺される光景を見ずにすんだのが、せめてもの救いだったな」
「あんな事するのはマジ、人間だけッスよ」
暗黒騎士が吐き捨てるように言う。
「だよな。なんで種族として、あんなに善悪の幅があるんだろうな」
妖魔大王も様々な人間がいる事は知っている。
勇者と呼ばれる人間にも会ったし、悪魔と呼ばれる人間にも会ったことがある。
妖魔大王にとって、それはとても不可思議な事に思えた。
種族としてみた時には、だいたい善悪どちらかに片寄っているものだ。
「じゃ、わしはこの子を連れて帝国に帰るから、お前は「味一」を見に行ってくれ。建物だけならいいんだが、人がいたら保護してやらねばいかんからな。帝国に戻ったら応援に何人か寄越すから頼むぞ」
「OKッス。じゃ大王様も気を付けて」
「おい。ポケットから手を出しとけよ。転んだ時危ないぞ」
「はいはいッス」
そういって暗黒騎士は暗闇の中に消えて行った。
(異世界に来て、もしかしたら人間と共存できるかもと思ったが、何も変わらんのかも知れんなぁ)
妖魔大王はふぅとため息をつくのだった。
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