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淳がいない──……
まゆこは愕然とした。
このまま淳に会えることなく世界は終わってしまうのだろうか…
ふと、まゆこは思った。
毎日一緒にお弁当を食べる学校の屋上……
ここにはほぼ誰も来ることがなく、いつも私と淳の貸し切りだった。
当てずっぽうかもしれないが、このまま立ち止まっている訳にもいかない。
まゆこはまた走り出した。
学校につくと、既に外壁が剥がれたり、校門がくずれたり、二階や三階も崩れかけていた。屋上は無事だろうか……
今にも崩れそうな階段を駆け抜けて、屋上の扉を開けた。
「淳!」
見知った背中に大声で叫んだ。
「まゆこ、やっぱり来たな」
「だって、私達の場所ってここじゃない」
まゆこはにっこり笑った。
「地球、終わるらしいな」
「うん」
「まゆこに会えて良かった」
「私も。家族さえ振り切ってここに来ちゃった。淳ママも心配してたよ?」
「うん、家族には悪いと思ってる。でも俺はまゆこに会いたかった」
まゆこの瞳から一筋の涙が流れた。
そんなまゆこを淳はギュッと抱きしめた。
「最期まで、一緒にいてくれる?」
「当たり前だろ」
淳はまゆこを離し、2人で崩れかけた屋上に座って手を繋いだ。
色んな話をした。
最期を前に心残りがないように。
そして最期の瞬間は訪れた──……
屋上が大きく揺れ、足場が崩れ落ち、まゆこの体が宙に浮いたのだ。
全力で屋上の端に手を伸ばした。
「まゆこ!まゆこ!」
その手を淳が必死に引っ張って、まゆこを助け上げた。
瞬間──……
今度は淳の足場が崩れ落ち、今度はまゆこが淳を引き上げる形になった。
けれど、女性が男性を支えきれる訳もなく、まゆこは涙が止まらなかった。
「まゆこ、もういいから。手ぇ離せよ」
「やだっ」
けれど、まゆこの両腕はもう限界を迎えていた。
「淳、淳、やだよ……」
すると、淳がまゆこの手を引き剥がし、「愛してる」の一言と共に落下していった。
「淳!淳!」
まゆこは大声で叫びながら泣いた。
直後、まゆこの足元の地盤も崩れ始め、まゆこも落下していく。
「淳、私も愛しているよ……」
生まれ変わってもまた淳に会えますように……
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