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「……この事故で、軽自動車を運転していたF市の諌山亮一さん46歳が、全身を強く打って死亡しました。現場は見通しの悪いカーブとなっており、警察では……」
(ん?)
聞き流していたアナウンサーの言葉に何となく聞き覚えがあるような気がする。
(そうだ、確か昨夜連呼されてた名前はイサヤマリョウイチじゃなかったっけ……全身を強く打って死亡……?)
薄気味の悪さを覚えた中原は、テレビを消してしまった。
その夜。
昨日と同じように23時台のニュースを見終わって、就寝モードに入ろうとしていた中原の耳に、またもやあの妙な声が聞こえて来た。
「……サン」「……サン」
真夜中の町の静かな空気の中に幽かなノイズが混じってくる。
「……トコサン」「……モトコサン」
昨日と同じようなペースで段々と近づいてくる。
「トリガイモトコサン」「トリガイモトコサン」
男とも女ともつかぬ甲高い声。連呼される名前がはっきりしてくる。
(またか……?)
昨日と同じような声が人名を連呼している。好奇心の方が勝ってしまって、つい、また、窓枠に近づいてしまった。その瞬間。
「トリガイ……」
昨日と同じように連呼が止まった。
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