真夜中の散歩者

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 中原は我に返ると、慌てて窓際から飛びのいた。 (何で自転車なんか乗ってるんだ?)  カシャン、とスタンドを外す小さな音がしたと思うと、その声はまただんだん加速しながら遠ざかって行った。 「アズマシンイチロウサンオオカワサユリサンニカイドウメグミサンミゾグチキョウコサン……」  翌朝。  慣れない酒を飲んで二日酔いの中原は、頭から布団をかぶってベッドの中で丸まっている。今日はもう絶対起きない。テレビも見ない。絶対部屋からも出ないぞ。  昨夜あいつに連呼された多数の人名。今、世間で何が起きているか知りたくもない。  と、突然、ベッドサイドに置いた携帯がけたたましく鳴り始めた。 (なんだよ……)  二日酔いの頭に響く呼び出し音で、たちまち気分が悪くなる。吐き気をこらえて画面を見ると、母親からだった。 「……もしもし……」 「あ、ケンちゃん。そっちに何か連絡入ってない?」  緊迫した母親の声はいつにもまして甲高くなっている。 「……は?連絡ってなによ?」 「なにって、浩介伯父さんのことよ!」 「伯父さんがどうしたんだよ」  海外旅行中の伯父の名前を聞いて、中原は不吉な気持ちになる。     
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