真夜中の散歩者

「どうしたって、あんたニュース見てないの？伯父さんと伯母さんの乗った船が大変なのよ！今すぐテレビつけて！」
　ただならぬ雰囲気に一気に酔いが覚めた中原は、慌ててテレビに走ると電源を入れる。
　果たして最初に現れた画面には、波に揺れる大海原、そしてその真ん中で不気味な黒煙を火山のように吹き上げている白い船の映像が大写しになっている。画面の右上には”[速報]豪華客船が爆発炎上“という短い見出しが見える。
（まさか……）
　呆然とする中原の耳にアナウンサーの音声が流れ込んでくる。
「繰り返してお伝え致します。本日未明、旭日クルーズ所属の豪華客船、“大鳳Ⅱ”が太平洋を航行中に大爆発を起こし、現在も炎上、漂流中です。現場付近の海域は悪天候のため救助活動は難航しており……一方、カルト教団として知られる“聖贄の国”の本部に、先ほど警視庁の強制捜査が入り、複数の教団幹部が逮捕されたとの情報が……なお、“大鳳Ⅱ”の事故は同教団によるテロ行為との一部報道については……」
「もしもし！ケンちゃん！」
　中原の手から滑り落ちた携帯から半泣きの母親の声が漏れてくる。

　その夜。