真夜中の散歩者

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 中原はベッドの中で悶々としていた。酒は気持ち悪くてもう飲めない。早々に寝てしまおうと思ってベッドに入ったが、いつあの声が聞こえてくるかと思うと、眠れない。もう、夜眠るのが怖くなってしまった。  眠れぬままにあれこれ考えてしまう。一日目は赤の他人。二日目は自分と同じ学部の学生。三日目は……聞き逃していたけど、多分あの中に自分の伯父と伯母の名前も入っていたんじゃ…… 「くそ!だから何なんだよ!」  思わず声に出して独り言を叫んでしまう。だから何なんだよ、だから……あれは何でもないんだ。真夜中の散歩が趣味な奴もいるさ。あいつは適当な人名をしゃべりながら散歩するのが趣味なんだ。根拠の無い考えでも自分に言い聞かせていないとおかしくなりそうだ。  そうこうしているうちに、時間がどんどん経った。ふと気づくと、いつもより二時間くらい経っているが、何も聞こえてこない。中原は不思議に思った。  今日ぐらいは何も無いのかな。考えてみりゃ、いくら世の中ごたごたしてるからって、一日くらいは何も起きない日が有ってもおかしくはないよな……  時計はもう二時半を過ぎている。久しぶりの静かな真夜中だ。  今日はもう来ないんだろう。少し安心した中原は、眠りについた。  ピンポーン!  微睡んでいた中原の耳に、馬鹿でかい呼び鈴の音が飛び込んだ。 「うわっ!」  思わず声を出してしまう。 ピンポーン!ピンポーン!     
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