化物が怖くて忍者ができるか!

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耳元で低い声がつぶやく。 「お主、盗人(ぬすっと)か」 刃の先が俺の首をなで上げる。 「盗人は、許すまじ」 首をかききって殺される自分の姿が脳裏にひらめいた。 胸だか喉だかがキュッと締めつけられ、視界が涙で滲んでいく。 いやだ、いやだ、いやだ。死にたくない。 死にたくないし、俺は忍者だ。敵地で死体を晒すなんて失敗をするわけにいかない。命をかけてでも任務を果たして、帰らないと。 泣き叫びたい気持ちをこらえて、どうしたらこの状況から抜け出せるか必死で考えていると、相手がおかしな呼吸を始めた。 「ハッ、……ハッ」 これは! この後なにが起こるか読めた俺は、相手に気づかれないように、こっそり懐をさぐった。 この好機を活かせば、いけるかもしれない。 見つけた手裏剣をにぎりしめ、その時を待った。 「ハックション!」 相手のくしゃみと同時に、俺の首から切っ先が外れた。 今だ! 振り返りざまに腕をはねのけ、手裏剣を構える。しかし 「ぎゃ、ぎゃあああ!!」 忍者としてあるまじき絶叫を発してしまった。思わず力が抜けた手から手裏剣が滑り落ちる。 相手の顔面から目が離せない。 金色に光る大きな目。怒ったように盛り上がる鼻孔。大きく開かれた口の中は真っ赤で、巨大なキバが突き出している。頭には、雄牛のような角が二本。 「お、鬼っ!」
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