サヨナラ、僕等の恋

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「俺、北原様のこと結構本気だったんですけどねぇ」  卒業式を数日前に終え、退寮を明後日に控えたその日。北原様の自室にて、俺、時田一太郎は不意にそんなことを呟いた。  どうして俺が北原様の部屋に居るのかというと、もちろん北原様が俺の恋人だから……ということではなく。たまたま寮の廊下で北原様とばったり会い、即座に回れ右して逃げ出そうとする北原様の腰にすがりついて北原様からの罵倒を存分に戴いた後、折れた北原様から「きみとも今日限りだろうし」と自室にお招き戴いたのだった。  北原様のルームメイトは既に昨日退寮したらしい。北原様のお部屋に二人きりなんてドッキドキ、押し倒されちゃったり……なんてことは起こるはずもなく、俺はいつものように北原様に変態めいた発言をするし北原様もいつものように俺に罵倒と塩対応を返していた。  北原様の退寮は明日らしく、部屋の中は備え付けの家具以外は大きめのダンボールが数個積まれているくらいで、大分殺風景になっていた。  そんな北原様の部屋を眺めながら、明日からもう北原様と会うことはなくなるんだと考えていたら、ぽろっとその言葉が出ていた。 「俺、北原様のこと結構本気だったんですけどねぇ」  そう言って俺がけらけら笑うと北原様は露骨に顔をしかめ、「よく言うよ。あの告白、僕を丸め込む為の嘘だったくせに」と吐き捨てた。 「あれっ、バレてました?」 「2年間もきみの悪ふざけに付き合わされてれば、流石にね」 「でも俺が今北原様のこと好きだっていうのは本当ですよぅ。いやもうマジで、ラブです! なじって下さい北原様!」  と俺が叫ぶと、北原様は絶対零度の眼差しで俺を見つめてきた。正直ご褒美です、あざーっす!
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