霞む朝焼け

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 このセントラルシティには命、金、夢、犯罪… すべてのエネルギィが集まり、出口を求めて渦巻いている。 そんなエネルギィの新陳代謝に参加している田中は、この街に来て十年以上が経つ。 田中はこの街の忙しない生命活動をただぼんやりと眺めてきた。 これからもこうやってぼんやりと眺めていくのだろうという予感が、田中にはあった。 別段眺めていたいわけでもないのだが。 田中の予感や予想は、いつも彼の意志とは独立されたものだ。  絶えず更新しているようで何も変化していない街並みには、やはり変わらない空気と味がある。 田中が通うこの喫茶店も長らく何も変わっていないことを店構えでもって主張していた。 店に入ると店主は何も聞かずにコーヒーを二つ淹れてくれる。 店と同じく年季の入った店主はあれこれと話しかけてくれるが頷くことしかしない。 煩わしいということではない。 ただ喉が弱くて朝は声が出ないだけなのだが、この店主はそこのところをわかってくれているだろうか。 午後に訪れることもあるが、もしかしたら別人だと思われているかもしれない。 なんとなく可笑しくて、くすっと笑ってみたが、そのささやきよりも密やかな笑い声は誰の耳にも届くことなく街に吸い込まれていった。 こうした社交辞令よりもささやかなものたちが街を霞ませているのかもしれない。
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