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「すまない…… すまない…… こんな事になってしまって」 「いいのです、川喜田様は悪ぅございません」 「違うのだ…… 拙者が上役を止められなかった事が原因なのだ…… 黒川殿は相手に対する慈しみの心を持たぬ男…… このような男に大事なそなたを抱かせる事は我が身を割かれるよりも辛いことと分かっていたのに……」 「良いのです、お気になさならないで下さいませ」 「それに拙者は最低だ…… 黒川殿に抱かれておるそなたを見て拙者でなくても良いのでは無いかと頭の中をよぎってしまった、そなたの事は信じたいと思っておる、だが歪みつつも悦びの顔を見せるそなたの顔を見るだけでその心も揺らぎに揺らぐ…… そなたの心が奪われてしまうのでは無いかと不安になるのだ」 「確かに私は誰にでも股を開く売女に過ぎません、ですが、川喜田様を好きと言う気持ちは揺るぎません」 川喜田は私をそっと抱き寄せた。これだけで心は川喜田で満たされたような気がした。もしこれが無ければすぐにでも中庭の木で首を吊るか井戸に飛び降りるかのどちらかをしていただろう。死んでしまえば川喜田にはもう会えなくなってしまうのだから。 「川喜田様、大好きでございます」 川喜田はその言葉を聞いて骨が折れるかのような勢いで抱きしめた。 「い、痛うございます」 「少しだけこのままでいさせてくれ」 数刻後、川喜田は私に一礼だけして茶屋から去って行った。私は水仙の間の前の廊下で彼を見送った。川喜田が見えなくなったところで私は呟いた。 「川喜田様、だいすきです」
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